ギリギリになって申し出ても、リスケは認めてもらえません。では、いつから「計画」を始めるか?
2023年3月9日の日本経済新聞の朝刊に、こんな記事がありました。
●倒産11カ月連続増 2月、「息切れ型」広がる
この記事に記載されているのは、以下の内容です。
●2月の全国企業倒産件数は前年同月比26%増の577件と、11カ月連続で前年を上回った
●「ゼロゼロ融資」返済が本格化し、経営再建を断念する息切れ型の倒産が広がっている
●倒産件数の増加基調は顕著になっている
●運輸業は2.3倍の36件、建設業は44%増の115件、製造業は15%増の60件だった
●経営改善が進まず、事業継続を断念する企業が増えている
●東京商工リサーチは「企業倒産は春先から増勢を強める可能性が高まっている」と指摘する
いきなり倒産する企業はほとんどない
業績が悪化したからといって、いきなり倒産する企業はほとんどありません。
「まずは金融機関にリスケを申し出て返済猶予を行い、その返済猶予期間で経営改善に取り組みながら正常化を目指す」というプロセスを踏みます。
この返済猶予期間内にうまく経営改善ができなければ「事業再生不可能」となり、倒産に至ります。
リスケに応じてもらえなければ事業継続は困難
リスケを行うにしても、そのタイミングが重要です。
資金繰りが厳しくなり「来月から返済ができない」というタイミングでリスケを申し出ても、まず金融機関は首を縦に振りません。
金融機関としてはリスケを依頼されても、応じるかどうか判断するのにある程度の時間がかかるからです。いきなり「来月からリスケお願いします」と言われても対応できません。
リスケに応じてもらえなければ、事業者は「返済を続けるか」「延滞するか」しか選択肢がなくなります。返済を続けると資金繰りは当然より厳しくなるため、事業継続が困難になります。かといって延滞してしまうと「期限の利益を喪失」してしまうため、全額返済を求められます。
全額返済できなければ担保不動産の競売や、保証人への代位弁済請求となり、いよいよ事業継続は絶望的に。「事業を立て直したい」と望む限り、何としてでも金融機関にはリスケに応じてもらわないといけません。
それには「計画」が必要です。
リスケ依頼の段取り
適切な段取りを踏めば、金融機関はリスケ依頼にスムーズに応じやすくなります。
(1)6ヶ月前がリスケ検討タイミング
リスケ依頼の検討を始めるタイミングは、リスケ実行時期の【6ヶ月前】です。
資金的な余裕がない状態でリスケを依頼したと考えましょう。この場合、すぐに認めてもらえないと困りますから、交渉に時間をかけることができません。金融機関から厳しい条件を突きつけられても、飲まざるを得なくなります。
しかし6ヶ月前の時点では、苦しいながらもまだ資金的な余裕はあるでしょう。その状況で交渉に臨めば、交渉に時間をかけられます。ある程度は事業者側の要望を聞いてもらえる可能性が出てきます。この差は、とても大きい。
期でいえば、直近決算で「債務超過」に陥ったときが、リスケ検討タイミングでしょう。
「債務超過」になると、基本的に金融機関からは「新規融資」には応じてもらいにくくなります。そこで「資金繰り表」を作成し、「リスケを依頼するかどうか」の判断をいったんこのタイミングでしておきましょう。
(2)3ヶ月前には「融資の依頼」
ここでリスケ依頼の判断をしても、すぐにその実行に向けて動くのではありません。
新規融資に応じてもらいにくいことはわかっていても、リスケを実行してもらいたい時期の【3ヶ月前】に、「あえて」金融機関に「融資の依頼」を行ってください。
かなり高い確率で断られますが、それが目的です。「融資を申し込んだが断られた」という結果を出して、「融資してもらえなかったのでリスケせざるを得ない」状況を金融機関にわかってもらうのです。
ここまで来ればリスケの依頼をしても、金融機関としては「融資を断ったからリスケも致し方ない」と考えやすくなるでしょう。
(3)2ヶ月前の「経営改善計画書」提出が理想
リスケ依頼には、「どう正常化していくのか」を説明する資料として「経営改善計画書」を提出する必要があります。
金融機関はこの経営改善計画書の内容を精査し、リスケに応じるかどうか、また、応じるなら条件を決めます。その審査には、少なくとも1ヶ月程度の時間が必要でしょう。
また、1ヶ月程度で結論が出ても、事業者がとても受け入れられない厳しい条件を突きつけられることも多々あります。
こうなると交渉が必要です。時間がかかります。だからこそ、経営改善計画書は【2ヶ月前】に提出するのが理想なのです。
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