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融資案件が近頃通りづらくなった理由

更新日:2022年12月28日


新型コロナの感染拡大が長引き、中小企業の業況が芳しくない昨今です。金融機関に寄せられる融資の相談は多いものの、簡単に通らないケースが増加しています。


融資実務を知らない担当者が増えている。


金融機関にもよりますので一概には言えませんが一般的に、入社して1年経つと、渉外担当者として顧客を担当するようになります。


渉外担当者として顧客を担当するあたり、簡単な研修は本部で行われます。が、融資に関する研修は、あまり行われることがないのです。融資の実務は現場で覚えることがほとんどといっていいでしょう。


以前から私が「若い渉外担当者に当たると融資実務に詳しくないので、説得力の高い稟議書を作成できない、融資が通りづらい」と言ってきたのは、そういう背景もあるからです。


 ※また融資以外の保険や投資信託も売らないといけない、かといって働き方改革で職場も残業を増やすわけにはいかず、若手が勉強に充てられる時間は物理的に足りないのです


それに加えて、2020年5月にはじまった「民間金融機関による実質無利子無担保融資制度」、いわゆる「ゼロゼロ融資」の影響も大きい。当時はスピード重視の対応だったため、通常の審査は行わず「前年同月比の売上」のみを見て融資していました。


スピード重視で内容の吟味は二の次… そんな融資案件しか経験してこざるを得なかった現在の若手担当者。その多くは、3年目、4年目になっても通常の融資の実務経験に乏しく、取引先から融資の依頼を受けても「何を尋ねて」「何を見れば」よいのかがわかりません。



融資稟議のしくみ

今まで何度もお伝えしてきましたが、重要なことなので再度お伝えします。


金融機関が融資をする際、担当者は「融資稟議書」を作成します。


その際かならず書くべき項目は「金額」「金利」「実行予定日」「貸出期間と据置期間」「保全」「資金使途」「返済資源」「融資効果」の8つ。


とりわけ「資金使途」「返済資源」「融資効果」は審査に大きな影響を与えるため、この3点は詳細に説明することを求められます。


稟議書は、支店の上司(渉外担当者役席・貸付担当役席・副支店長・支店長)や、本部の審査部門の審査担当(審査担当者・審査担当役席・審査部長)がそれぞれ審査を行い、「この事業者に貸してもよい」と判断したときに印鑑を押します。


審査する7名のうち一人でも稟議書の内容に納得しなければ、その稟議書は「否決」になります。



なぜ融資否決になるのか?

通る稟議書を作成するために担当者に必要な能力は、「情報収集能力」と「情報分析能力」の2つ。


「情報収集能力」とは、担当者が稟議書に書き込むべき内容について情報を顧客から引き出す能力(ヒアリング能力)のこと。


「情報分析能力」とは、集めてきた情報を説得力のある稟議書に反映するための分析能力と文書作成能力のこと。


若手担当者は経験が不足しているため、どちらの能力も育っていないのです。とくに乏しいのは「情報収集能力」で、説得力の高い稟議書を書けません。どんなすばらしい料理人でも材料がなければおいしい料理を作ることができないのと同じ。だから「否決」になるのです。



情報収集能力に乏しい若手担当者が顧問先の担当になったら

若手担当者は、「情報収集能力」と「情報分析能力」が低いとお伝えしました。では、若手担当者が、あなたの顧問先の担当になったら、「融資は期待薄」と諦めなければならないのでしょうか?


ひっくり返す方法はあります。「借りる側から資料を提出して、積極的に情報提供を行うこと」です。


口頭で自社の情報を伝えても、担当者は理解できていなかったり、理解していても稟議書にうまく反映することができなかったりするかもしれません。事業者の情報が、上司など審査する側に正確に伝わらない可能性大です。


一方、資料を提出すれば、その資料が稟議書に添付されます。事業者の情報を、渉外担当者の上司である渉外担当役席や貸付担当役席、支店長、本部の審査部署に正確に把握してもらうことができるようになります。


これまでは借りる側ではなく、貸す側が用意していた資料です(金融機関は基本的に「貸したい」のです)。しかし今後は借りる側が面倒がらず、融資に有利に働く情報を「資料」として作成して提出することが重要です。

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